「7勝7敗は千秋楽に強い」は本当か
本当でした。14日目を7勝7敗で迎えた力士は、千秋楽に56.2%勝つ。五分の相撲なら50%のはずが、6ポイント上振れ。鏡写しに、負けても勝ち越しが消えない8勝6敗の力士は45.0%しか勝てません。あとがない者は強い——執念は、数字になります。ひとつ付け加えると、この上振れは2000年代には59.9%ありましたが、2011年以降は52.9%まで縮みました。執念の相場も、時代とともに変わるようです。
通説は、本当か——データ親方が見た大相撲
ここに書くのは、過去の膨大な取組を“その場所が始まる前に分かっていたデータだけ”で確かめた結果です。 相撲の面白さを否定するものではありません。むしろ、数字にしてみて初めて見える相撲の奥行きを、少し意地悪な視点でお届けします。
本当でした。14日目を7勝7敗で迎えた力士は、千秋楽に56.2%勝つ。五分の相撲なら50%のはずが、6ポイント上振れ。鏡写しに、負けても勝ち越しが消えない8勝6敗の力士は45.0%しか勝てません。あとがない者は強い——執念は、数字になります。ひとつ付け加えると、この上振れは2000年代には59.9%ありましたが、2011年以降は52.9%まで縮みました。執念の相場も、時代とともに変わるようです。
本当でした。平幕が横綱を破った金星の翌日、その力士の勝率は38.0%。同じ力士の同じ場所の他の日(48.2%)より10ポイントも低い。大仕事の反動——と言いたいところですが、種明かしをひとつ。金星の翌日は、大関など上位との対戦が続いていることが多いのです。反動と相手の強さ、両方が混ざった数字。それでも「金星の翌日は要注意」は、覚えておいて損のない目安です。
数字は逆でした。前の場所を全休した力士は、復帰場所で勝率59.2%。初日に限れば65.9%も勝っています。カラクリは番付です。休んだ力士は地位が大きく下がり、復帰場所では格下と当たる。だから勝てる。危ないのは休場明けの本人ではなく、番付を下って戻ってきた実力者と当たる相手の方でした。
本当でした。負け越せば陥落の角番大関は、平均8.15勝・勝ち越し率78.2%。追い込まれていない通常時の大関(75.3%)より、むしろ生き残り率が高いのです。土俵際に立たされたときの集中力は本物——物語ではなく、データがそう言っています。
押し相撲 vs 四つ相撲——ファンが重んじる『型の相性』を全取組で測ると、勝敗を動かす力はわずか±3%。型の相性だけで勝敗を当てにいくと的中率は50.8%、ほぼコイン投げでした。「押しは四つに強い」という感覚は、印象に残る一番があるだけで、平均すればほとんど消えてしまう。相性は『物語』としては最高でも、『法則』ではないようです。
半分本当で、半分違いました。東方の力士は平均7.59勝、西方は7.41勝。たしかに東が勝っています。ところが同じ地位(たとえば前頭5枚目)の東と西で比べると、差はほぼゼロ。つまり東の方角が有利なのではなく、東には半枚だけ強い力士が置かれている(番付は東が上位)だけでした。有利なのは方角ではなく、番付。当たり前のようで、数字で確かめると気持ちのいい結論です。
壁は、はっきり存在しました。初めて三役(小結・関脇)に上がった力士は平均6.16勝。勝ち越せるのは27.7%だけです。小結全体の勝ち越し率(42.3%)と比べても明確に低い。毎日横綱・大関と当たる番付の洗礼は、数字で見ても高い壁でした。逆に言えば、新三役でいきなり勝ち越す力士は、それだけで本物です。
本当でした。体重158kg超の力士は序盤(1〜5日目)50.5%→終盤(11日目以降)47.8%と失速。対して軽量の力士は48.3%→50.7%と尻上がりです。15日間の消耗は、身体が大きいほど数字に表れる。終盤に軽量力士を買うのは、理にかなった作戦かもしれません。※体重は現在の公表値による近似、直近2年強で集計。
本当でした。勝ち星の25%以上を引き技(叩き込み・引き落としなど)で稼ぐ力士の幕内勝率は46.2%。引き技が12%以下の力士は49.7%で、その差3.5ポイント。相関もはっきりマイナスでした。引きは一番を拾えても、場所を落とす——土俵の格言は、データでも正しかったのです。
残念ながら、幻想でした。大阪・名古屋・福岡圏出身の力士がご当地場所で挙げた勝率は47.3%。他の会場(47.9%)と差がありません。むしろ首都圏出身力士は、東京(48.8%)より地方場所(50.6%)の方が勝っています。大声援は力士の胸を熱くしても、勝ち星までは運ばない。もしかすると、故郷の重圧のほうが重いのかもしれません。
波の話は、わずかに本当。場所ごとの勝ち星のブレは押し相撲2.14、四つ相撲2.05で、たしかに押しの方が荒れます。ただし僅差です。それより目を引いたのは平均勝ち星の差。四つ相撲7.49勝に対し、押し相撲は7.23勝。型の『相性』は幻想でしたが、型と『安定して勝つ力』にはうっすら関係がある——長持ちするのは、四つでした。
数字は落ちますが、『緩み』と断じるのは早い。8勝目に到達した後の勝率は52.7%で、そこまでの勢い(65.4%)からは確かに下がります。ただし終盤は星の良い者同士が当てられるため、勝ち越し後は相手も強くなる。実際、10日目までに早々と勝ち越した力士は、その後も58.0%勝っています。緩んでいるのではなく、日程が牙をむくのです。
少しだけ本当。初めて幕内に上がった力士は平均7.42勝で、勝ち越せるのはちょうど半分。再入幕組(7.23勝)や在幕30場所超のベテラン平幕(7.28勝)より、わずかに上回ります。勢いは確かにある。ただし劇的ではなく、幕内の壁は新人にも平等に高い——だからこそ、二桁勝つ新入幕は騒がれるのです。
個別の対戦成績が予想に効きそうで、実は限定的。対戦経験のある組み合わせは全体の42%だけ、しかも数番の記録は『相性』というより『ただの偶然』。そして「あの力士に強い」の多くは、単にその力士が強いだけ——強さ指数で測ると、独立した相性はごくわずかに縮みました。
予想の土台になっている考え方と、正直な限界の話です。
実力がほぼ互角(強さの差がごくわずか)の取組は、全体の52%。そこでの的中率は55%——コイン投げに毛が生えた程度でした。つまり相撲の面白さの半分は、どんなに分析しても本質的に『読めない』部分にある。番狂わせは事故ではなく、相撲の設計そのものです。
番付は、前の場所の成績をもとに人が決める“格付け”です。でも力士の本当の強さは、番付が追いつく前に変わっていることがあります。このサイトの『強さ指数』は、勝ち負けだけを積み重ねて日々更新していく数字。番付にはまだ表れていない“伸びている力士”や、地位は落ちても実力が残る“戻り待ちのベテラン”を、いち早く映し出します。実際、その場所が始まる前のデータだけで予想を比べると、幕内では強さ指数の方が番付より多く当たりました(およそ60%対56%)。番付表の上下だけでは見えない“隠れた強さ”——ここに、波乱の芽があります。力士ページの「強さ指数」と「勢い」で、その気配をのぞいてみてください。
経験の浅い若手は、一番ごとに評価が大きく変わります。まだ底が見えないぶん、勝てば一気に評価が上がり、まさに“化ける”。一方、長く取ってきたベテランは実力が定まっていて、評価が安定——つまり“読みやすい”。データ親方も、若手ほど新しい結果をすばやく取り込むように作ると、予想がよく当たるようになりました。「あの新入幕、勢いがすごい」「あのベテランは安定感がある」——ファンが肌で感じる印象は、数字の上でもその通りだったのです。だからこそ、勢いのある若手が上位を食う一番は、見逃せません。
あれこれ試し、強さの測り方を磨き込んでも、幕内の的中率は約60%で頭打ち。ここが今のデータで届く天井です。残り4割は当たらない。でもそれは、力士の努力と土俵の一瞬に、まだ数字が追いつけていない証でもあります。
※ 予想は、その場所が始まる前に分かっていたデータだけで出しています。数字は直近の場所にもとづくおおよその値です。
データは日々更新され、解釈も随時見直します。